API管理製品比較にあたって必要な視点 「新しい」か「レガシー」か

By webapi.tokyo – 2021年8月6日

弊社では、これまで100社以上の国内企業にAPI管理ソリューション/ソフトウェア導入のためのアドバイスをしてきました。
そのために、2016年から「API管理ソリューション比較表」を提供してきましたが、実際のご検討におきましては、比較表の〇✖(マルバツ)では判断が難しい、といったご意見も多いため、比較表では表現が難しい「ユーザー視点」をご提示するための記事を本ブログにて公開していきます。

今回の記事では、視点1として【「新しいアーキテクチャ」か「レガシーなアーキテクチャ」か】について、視点2として【「複雑・多機能」か「シンプル」か】について書いております。

視点1. 「新しいアーキテクチャ」か「レガシーなアーキテクチャ」か

API管理ソフトウェアの歴史は長く、「レガシーなアーキテクチャ」に属するGoogle Apigee、MuleSoft Anypoint、Red Hat 3scaleなどは2010年代から始まり、10年以上も使われてきたソフトウェアです。これらは、従来からの「EAI」「SOA」といった企業のシステム間連携のソフトウェアの影響を受けており、SOAPプロトロルやアダプターを使ってレガシーシステムと連携できるなどの強みを持ちます。

これに対してAmazon、Kongなどの製品(サービス)は2010年代後半から始まった比較的新しいソフトウェアです。これらは「新しいアーキテクチャ」で、REST APIを中心として「マイクロサービス」や「サーバーレス」のような新しい技術との連携や、企業システムの「モダナイゼーション」を重視しています。

そしてIBM API ConnectはレガシーなAPI製品と、買収した新しいソフトウェアを統合した折衷型のソフトウェアです。
MS Azure API Managementも、SOAPが利用可能でマイクロソフトの既存「.NET技術」との親和性が高いため折衷型のソフトウェアに分類したほうがいいでしょう。

視点2. 「複雑・多機能」か「シンプル」か

「レガシーなアーキテクチャ」のソフトウェアは多機能であるとともに、ソフトウェアのコンポーネントも多く複雑です。特にGoogle Apigee、MuleSoft Anypoint、IBM API Connectは多機能であるがゆえに高価格でもあり、その多くの機能が本当に必要か見きわめる必要があります。例えばMuleSoftは100種類以上のレガシー接続などの「アダプター」を提供可能ですが、全て必要な企業はまずないでしょう

また、Apigee、MuleSoft、API Connectは構造的に複雑なソフトウェアであり、オンプレミスへの導入にはプロフェッショナルサービスが必要で、その複雑性によって運用も簡単ではありません。 

以下がApigeeのシステム構造の例です。ソフトウェア構成が複雑であることがおわかりいただけるでしょう。このためオンプレミスへの導入は容易ではありません。また運用においてもコンポーネントが多いため監視やメンテナンスの作業も複雑になりがちです。

Kongは、これに対して、対極的に「シンプル」で、導入も簡単でシステムが小さく高速に動作しますが、十分な機能を提供します。 

以下の図がKongの基本的なシステム構造です。基本的には、APIゲートウェイ(実体はWebサーバーのNGINX)と構成情報を格納するデータベース(PostgreSQLまたはCassandra)だけでAPI管理プラットフォームが構成されシンプルです。開発者ポータルなどは必要に応じてソフトウェアを追加することになりますが、基本構造がシンプルであるためオンプレミス、クラウドなど場所を問わず動作します。

AWSとMS Azureは、シンプルなSaaSでの提供によって導入は容易、かつ、十分な機能を提供します。 Red Hat 3scaleは元来ハイブリッド型のアーキテクチャで、比較的シンプルですが、オンプレミスへの導入はOpenShiftとの統合をすすめられることが多いために複雑になりがちです。